FXチャート大研究ノートCHART STUDY NOTE — TECHNICAL ANALYSIS

海外勢のポジションは毎週金曜に出る|COT報告の読み方

机の上に数字の並んだ資料と方眼ノート、鉛筆を広げてポジションの内訳を書き写している学習ノートのイメージ図

「海外勢が円を売っている」という一文を、私は長いあいだ出典なしで信じていました。そう書いてある記事を読んで、自分のノートにもそのまま写す。誰がどこで数えた数字なのかは考えていませんでした。元データを開いてみたら、その一文が指しうる数字は一つではありませんでした。

この記事では、米CFTCが公表しているCOT報告の仕組みと読み方を整理します。建玉の内訳が分かっても、そこから将来の値動きが決まるわけではありません。分かるのは「いつ時点の、誰の、どんな持ち高だったか」だけです。その範囲を正確にするための話だと思って読んでください。

この記事でわかること COT報告の正式名称と公表元/火曜のデータが金曜に出る3日の時間差/2026年の公表カレンダー/同じ週の円で買い越しと売り越しが同時に成立する理由/レポートから商品が消えることがある仕組み。

COT報告は、大口の持ち高を数えた表です

COTはCommitments of Tradersの略で、公表しているのは米商品先物取引委員会(CFTC)です。目的は市場の動きを一般に理解してもらうことだとされています。対象は、CFTCが定める報告基準以上のポジションを20人以上のトレーダーが持っている市場。そこでの火曜時点の建玉を、トレーダーの区分ごとに分けた表が出ます。

区分の根拠は、トレーダー自身がCFTCのForm 40で自己申告した主たる事業目的です。CFTCの職員が妥当性を確認しますが、個々の建玉がヘッジなのか投機なのかまでは分かりません。実際、producer/merchant/processor/userに分類されたトレーダーの数字には、その商品での全ポジションが入ります。区分は「その人の看板」であって、「その建玉の目的」ではありません。ここを取り違えると、表の意味が変わってしまいます。

火曜の数字が金曜に出る、という3日のずれ

公表のタイミングは、あらかじめ決まっています。COT報告は原則として毎週金曜の米国東部時間15時30分の公表で、使うのはその週の直前の火曜時点のデータ。CFTCは報告会社から水曜の朝にデータを受け取り、修正と検証を行って金曜午後の公表に間に合わせている、と説明されています。処理に3日かかる、というわけです。

つまり、金曜に出た数字は火曜に撮った写真です。水曜と木曜に何が起きていても、その表には写っていません。私はここで一度つまずきました。金曜の夜に数字を見て、そのまま「いまの持ち高」としてノートに書いてしまったのです。

COT報告が手元に届くまで(通常週) 火曜 … 引け時点の建玉を集計(この日がデータの基準日)
水曜 … CFTCが報告会社からデータを受領
木曜 … 修正・検証
金曜 15:30(米東部時間)… 公表
※ 祝日が入る週は公表日がずれる

2026年の公表日はCFTCのリリーススケジュールに一覧で出ています。9月は4日・11日・18日・25日、10月は2日・9日・16日・23日・30日。祝日の影響で遅れる回には印が付いていて、2026年では1月5日、6月22日、7月6日、11月16日、11月30日、12月28日がそれにあたります。毎週金曜、と丸暗記すると年に6回外します。

同じ週の円で、買い越しと売り越しが同時に成立します

ここからが本題です。COT報告は一種類ではありません。昔からあるLegacy形式の報告と、通貨先物を含むTraders in Financial Futures(TFF)報告では、トレーダーの分け方そのものが違います。

2026年9月8日時点の日本円(シカゴ・マーカンタイル取引所、1枚あたり1,250万円、コード097741)で並べてみます。建玉は両方の表で499,635枚と同じです。同じ市場の、同じ日の数字です。

レポート見る区分買い売り差し引き
Legacy(従来型)Non-Commercial178,791枚167,995枚10,796枚の買い越し
TFF(金融先物)Leveraged Funds81,760枚130,858枚49,098枚の売り越し

差し引きの符号が逆になりました。「海外の投機筋は円を買っている」も「円を売っている」も、この週については両方とも数字の裏付けを持てます。どちらかが誤りなのではなく、数えている集団が違うだけです。Legacyの Non-Commercial には、TFFで言うところのAsset Manager/Institutionalに相当する参加者も混ざります。

だから私は、この手の話を書き写すときに必ず二つ書き添えるようにしました。どのレポートか、どの区分か。この二つが無い「投機筋のポジション」という言葉は、残念ながら検証のしようがありません。

TFFは4区分、変化は前週との差で見ます

TFF報告の区分は、Dealer/Intermediary、Asset Manager/Institutional、Leveraged Funds、Other Reportablesの4つ。これに報告義務の無いNonreportable Positionsが加わります。TFFでは、あるトレーダーは全商品で同じ区分に入ります(商品ごとに区分が変わるLegacyとは、この点も違います)。

先ほどの9月8日時点の円を、前週(9月1日)からの変化とあわせて見ます。Leveraged Fundsは買いが23,231枚増え、売りが29,859枚減りました。逆算すると前週は買い58,529枚・売り160,717枚で、差し引き102,188枚の売り越し。それが1週間で49,098枚まで縮んだことになります。

枚数だと規模が掴みにくいので、契約サイズを掛けてみます。1枚1,250万円なので、49,098枚は約6,137億円、前週の102,188枚は約1兆2,773億円。ただしこれは持ち高の額面であって、損益でも資金量でもありません。桁の感覚を持つための換算です。なお建玉全体の499,635枚は、同じ計算で約6兆2,454億円になります。

この1週間で売り越しがおよそ半分になった、という事実はここで止まります。それが何を意味するのか、次に何が起きるのかは、この表からは出てきません。CFTC自身、よくある質問への回答として「CFTCは報告主体から得たデータに基づいてCOT報告を公表しているだけで、データの分析も、それに基づく推奨も行わない」と書いています。分析は読む側の仕事です。

数字が消える週、急に変わる週があります

使っていると、先週あった商品が今週の表に無い、という場面に出くわします。原因は決まっていて、報告対象となる大口トレーダーの人数が20人を下回ると、その商品や限月は表から外れます。再び20人以上になれば戻ってきます。データが壊れたわけでも、取引が止まったわけでもありません。

週をまたいで数字が大きく動く理由も、CFTCが3つ挙げています。トレーダーが新しいForm 40を出して主たる事業目的の申告を変えた場合、新しいトレーダーがForm 40を出して母集団が変わった場合、既存のトレーダーが市場から退出した場合。持ち高が動いていなくても、区分の付け替えだけで数字は動きます。

もうひとつ知っておきたいのは、公表済みの過去データを遡って更新しない方針だという点です。あとから直らない代わりに、過去の表はその時点で見えていた景色をそのまま残しています。検証に使うなら、この性質はむしろ都合がいいと思っています。

私の使い方 私はCOTを「相場を当てる道具」としては使っていません。使うのは、自分が前に書いた文章を検証するときです。ノートに「投機筋が売り越し」と書いた回を後から開いて、その週のどのレポートのどの区分がそうだったのかを確かめる。合っていた回もあれば、思い浮かべていた区分と実際に見出しが引いていた区分がずれていた回もありました。当てにいくのではなく、自分の言葉の解像度を上げるために開く。いまのところ、この使い方がいちばん落ち着いています。

自分でCOT報告を開いてみる

CFTCのCommitments of Tradersのページから、当週の報告に進めます。通貨を見るなら金融先物の報告を選び、JAPANESE YENの行を探してください。表の上に必ず「Positions as of(日付)」が書かれているので、まずそこを読むのが順番です。自分が覚えている値動きの週と、基準日の火曜がずれていないか確かめると、時間差の感覚がつかめます。

一次情報はCFTC「Commitments of Traders」のページです。

まとめ|「いつの・誰の」を書き添える

COT報告は毎週金曜の米東部時間15時30分に、直前の火曜時点のデータで公表されます。対象は報告基準以上の大口が20人以上いる市場で、区分はトレーダー自身のForm 40の申告に基づきます。2026年9月8日時点の円は、LegacyのNon-Commercialで10,796枚の買い越し、TFFのLeveraged Fundsで49,098枚の売り越しでした。同じ日の同じ市場で、符号が逆になります。

だからこの数字を引くときは、「いつ時点の・どのレポートの・どの区分か」を必ず書き添えることにしています。それを書ける形で持っていれば、あとから自分で検証できます。書けない数字は、そもそもノートに置かないほうがいい。次は、複数の時間軸で同じ場面を見比べる話に進みましょう。

啓
啓介
チャート分析が好きな個人トレーダー。理屈っぽい性格なので、テクニカルも丸暗記ではなく仕組みから理解したいタイプ。煽らず、断定せず、落ち着いた言葉で書くことを心がけています。

本記事はFX(外国為替証拠金取引)および公的統計の読み方に関する情報提供を目的としたものであり、特定の取引・手法を推奨するものではありません。掲載した数値は米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCommitments of Traders報告および関連ページを執筆時点(2026年9月13日)に参照したもので、最新の内容は必ず公表元でご確認ください。建玉の内訳は過去の一時点の集計であり、将来の値動きや利益を保証するものではありません。FXは為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。